キミの指笛が聞こえた。
 細長く、甲高い懐かしい音。
 私を呼ぶ、あの澄んだ音色。

「──行かなくちゃ」
 キミの許へ。キミが待つ、青空の下へ。

 

 

「 始 ま り の 物 語 」

 

 

 私は勢いよく立ち上がると、飛空挺内部へ足早に向かった。
「えっ? ……ユウナーん!?」
「ユウナ、どうしたんだ!?」
 セルシウスの甲板で、一緒に戯れ合っていたリュックとパインが、驚きの声をあげ、後を追う。
 私は振り向きざまに、二人へと告げた。
「合図が聞こえたの」

「──はあ?」

 二人は見事にハモりながら、首を傾げて、ブツブツと、「何か聞こえた?」等と、同じような会話を交わしていた。
 私がエレベータに乗り込むと、二人とも慌てて、閉まりかけたドアの隙間から、身を滑らせた。

 鼓動が高鳴り、急く気持ちを押さえられない。
 エレベータの扉が開くと同時に、私はブリッジ内に飛び込み、声高らかに叫んだ。

「アニキさん! ダチさん!」

 

 

 

 煌々と照りつける日差しを浴び、金髪の青年が、エメラルドグリーンの海原を、ビサイド島に向かい、泳いでいた。
 やがて浅瀬に差し掛かろうとする頃、青年は泳ぐのを止め、ゆっくりと砂を踏み締めながら、砂浜に歩き出した。
 ふと空を見上げ、太陽の光に目を細める。
 青年の視界には、次々と羽ばたく何羽もの海鳥と、それらに紛れて、鮮やかな赤いボディの飛空挺があった。
 近付いてくる、エンジン音に、青年の顔から、自然と笑みが零れてきた。

 

 

 

 セルシウスは、海鳥の群れを横切りながら、ビサイド島の砂浜へと、下降していく。
 私は、彼の姿を見つけると、身体の奥から湧きあがる、熱く滾る思いに、ただか細く震えるしか出来ずにいた。

「あーっ! 見て見て、ユウナん!」
 リュックが、地上を指差し、私に飛び付いた。
「ラストミッション、コンプリート……か」
 パインは、静かに呟くと、棒立ちのままの私の肩に、そっと手を置いた。
「一気に降りるぞ! 怪我しないように、どこかに掴まれ!」
 ダチさんが叫んだ。

 

 縮まっていく、キミとの距離。

 幻ではない。
 キミは、見慣れた景色の中に、はっきり存在している。

 早く触れたい。
 その温もりが、夢ではないと、確かなものだと、信じられるよう。
 本物であるという証拠を、感じられるよう。


 私は思わず、逸る気持ちに急き立てられるよう、ハッチへと駆け出した。

 

 永遠のナギ節。
 キミがくれる、その笑顔と、
 キミと紡いでいく、幸せの日々。 

 私の新しい物語は、これから始まろうとしていた。

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